ここまでやってるメディア企業、(たぶん)めずらしいです。ITmediaのグローバルプロジェクトとその自負 ~海外メディアとの馴れ初め紹介から、けっこう本質的な話なので聞いていってください~
こんにちは、ISR部のきゃCです。
さて、今回は私の参加している営業本部プロジェクト「グローバルセールスプロジェクト(以下、グローバルPJT)」を紹介します。
前回のコラム(https://promotion.itmedia.co.jp/blog/c101) ではラムネさんが社内プロジェクトを調査してくれていましたが、その中でも紹介のあった「グローバルPJT」が今回のテーマです。営業部の佐藤さんが中心となり、海外クライアントの対応や関係構築などを担っているプロジェクトです。私は学生の頃から英語など他言語でのコミュニケーションが好きで、海外のビジネスシーンにも関心があったため、得意を活かしたいという思いでこのプロジェクトにジョインしました。
まずは冒頭でこのプロジェクトの前提知識を少し共有してから、プロジェクトリーダーの佐藤さんとのインタビューを紹介します。
私が入社するはるか昔、佐藤さんがアイティメディアに入社されるよりも前から脈々と引き継がれてきたDNAについて、知っていただけたらと思います。
では、早速いってみましょう。
グローバルPJTの起源と歴史
グローバルPJTの前身は2015年に立ち上げられた「グローバルタスクフォース(通称GTF)」というもので、当時は海外ビジネスに関わりたいという有志が全社から集まり、各部署の、英語にまつわる仕事の相談に関わっていました。現在は営業本部プロジェクトとして活動していますが、創始当初は営業部以外の人たちも多く、売上最優先、という雰囲気ではなかったそうです。
また、当時は正規のプロジェクトではなかったためメンバーもボランティアのような形で参加しており、プロジェクトへの取り組みが現在のように個人の成績評価基準には反映されない中、毎週の定例会議や役割分担なども個人の時間からひねり出していたそうです。かなり熱量のある方々が参加されていたことが分かりますね・・。
立ち上げ当時の活動について
きゃC:
当時の活動内容や雰囲気について教えてください。
佐藤さん:
当時は、10人くらいのメンバーだったんですが、「アメリカのTechTargetからこんな問い合わせが来たよ」とか、あるいはIT系の営業部隊の方から「外資系クライアントの社長が来日されるので、ミーティングに同席してくれないか」とか、そういう話をゆるく情報共有をするような場だったんですよね。会社全体の海外案件が、もっと事業部を横断して可視化できればいいねっていうので始まった感じでした。
きゃC:
プロジェクトとしていきなり立ち上がったわけではなく、そういった経緯があったんですね。これは大体いつ頃のお話なんですか?
佐藤さん:
メールを掘り返してみたら、2015年の4月となっていました。
きゃC:
海外との窓口のような重要なポジションを担いつつも、本当に非公式での活動だったんですね。
佐藤さん:
最初はゆるい体制で始まったんですが、せっかくグローバルな案件が可視化されたので、じゃあこれを拡大するにはどうすればいいか?という話になってきました。一応ゆるい売り上げ目標は作って動いてはいたものの、依然ボランティアみたいな形で、みんな自分の時間を犠牲にして活動していましたね。
当時のメディアビジネスについて
きゃC:
そもそもアイティメディアは「ZDNet Japan」という名前の、米国ZDNet Inc.との合弁契約をしている会社だったわけですが、当時の国内外のメディアの様子について教えていただきたいです。
佐藤さん:
まず「アイティメディア株式会社」が誕生したのは1999年のことだけれど、当時私は別の会社に在籍していました。なので当時のことは詳しく知りません。知っているのは古参社員や社長の大槻さんくらいじゃないかと思います。
「Ziff Davis」や「TechTarget」といった、海外のオンラインに強いメディアと組んでビジネスを立ち上げてきたのがアイティメディアの特徴だと思うんですが、2006年頃にTechTargetジャパンがスタートして、おそらくロゴやビジネスモデルを借りるだけじゃなくお客さんも紹介してもらって、というところから始まったんだと思います。あくまで想像ですが。
きゃC:
なるほど。佐藤さんは当時どんなことをされていたのでしょうか?
佐藤さん:
僕は元々EDN Japanにいて、EDN Japanのメディア事業がアイティメディアに譲渡された2011年に、その会社からアイティメディアに移ってきました。EDN Japan自体が海外のお客さんがすごく多くて、直接やり取りしていたんですが、それを僕ともう一人の社員で対応していました。
きゃC:
EDN Japanは当時どんな会社だったんですか?
佐藤さん:
BtoB向けのエレクトロニクス専門メディアという中で、アイティメディアの競合のような感じもありつつ、お互いを補完し合うような雰囲気もありました。
きゃC:
では、かなりマッチした吸収だったんですね。
佐藤さん:
アイティメディア側としては、当時エレクトロニクス分野への関心が高かったようです。それで最初にEETimes Japanを買収し、 その後EDN Japanを買収したという流れかと思います。
当時は世界中でメディアが盛んに再編されていた時期で、ひとつはプリントメディアがだんだん衰退してオンラインメディアに移ってきたという事象とか、もう一つはリーマンショックで世界中で景気が悪くなって、広告が全然出なくなったんですね。
海外では、メディアを使うというよりは、有料データベースサービスが出てきたり、メディア企業がイベント主催者のような形にどんどん姿を変えていった時期でもあって、今後伸びないと思われたビジネスをどんどん売り飛ばしていたっていう時代だったんです。
きゃC:
なるほど。
佐藤さん:
その時に売られた中のひとつがEETimes Japanであり、EDN Japanでした。ちなみにエレクトロニクス業界の媒体は、アイティメディアが運営するMONOistや、日経エレクトロニクスも含めて全て競合関係だったんですよ。
きゃC:
ちなみに、EETimesもEDNもアメリカの企業ですよね?
佐藤さん:
そうです。アメリカでも競合と見なされていたので、買収された時は結構騒ぎになりました。どちらも同じくらい張り合っていたので、どっちが消滅してもおかしくない力関係でしたね。
海外との取引について
きゃC:
海外との取引現場って、どんな雰囲気なんでしょうか。
佐藤さん:
海外のお客さんとやり取りするのってすごく面白いんですよ。マーケティングマネージャーが強い決定権を持っているので、その場でバンバン決まるし、 あとすごくロジカルというか。 ちゃんと説明すればその場で決まるっていうダイナミックな営業活動ができて、これ面白い!って思ったのが、 海外営業を中心にやりたいって思ったきっかけですね。
きゃC:
スピード感が違いますね!今も昔もそこは変わらないですか?
佐藤さん:
完全にイコールじゃないですが、やっぱり日系企業と比べるとスピード感が違うと思いますね。マーケティングマネージャーが「あ、それいいじゃん、やろうよ」ってなったら大体話が進むという。
日本だとちょっと社内調整してからとかそういう話にいつもなっちゃうんですけど、基本はIT系/製造系問わず、このマーケティングの偉い人が「それいいね!やろうやろう!」ってなったら、 「はい、じゃあ予算をつけます。そっちの方向で進みます」みたいな感じで、とてもダイナミックで面白いです。
きゃC:
日本とのスタイルの違いがかなり明確ですね。
佐藤さん:
今でこそ、海外のVIPの人が日本に来てくれるとか、オンライン会議でディープな話が聞けるようになりましたけど、それまではやっぱり日本の担当者が代わりに話したり、代理店の人が話したりで。 なんていうか、情報を得るのに何枚かフィルターがかかっている感じで、「なんでそんなことがしたいの?」「そういうことがしたい背後にある考えは何?」っていう情報が入ってこなかったんですよ。
きゃC:
なるほど。
佐藤さん:
ところが、海外に行くとストレートに「いや、実はこういうことがしたくて、こういう戦略を立てていて、その枠組みの中で日本はこういう風に考えてるんだけど、どう思う?」みたいなことをすごくストレートに聞けるので、これはいけるねと。
きゃC:
生のコミュニケーションだとやはり全く違うんですね。
こういうふうに、海外の窓口を開拓していくというのは基本的には難しいことなんでしょうか。
佐藤さん:
例外はありますが、そもそもほとんどのメディア企業は、海外に対して直接営業活動するっていう動きがほぼないんじゃないかと思いますね。
理由の1つとしては、やっぱり英語を話せる人が少ないっていうことと、 もう1つは「それって意味あるの?」って考えてしまうところなんですよね。英語を喋れる人や、英語の資料を用意しなきゃいけない。だから、手間とお金をかけてアプローチして、そこまでして本当に成果につながるの? と、ほとんどみんなそう思ってしまう。
きゃC:
でも、いざやってみればっていう話だったということですよね。
佐藤さん:
そういうことですね。
きゃC:
単純に考えて、国内だけじゃなく国外まで手を広げれば可能性が広がるというのは単純な話ではあるけれど、現実的にはなかなか進められないっていうことなんですよね。
佐藤さん:
そうですね。外国人と話さなくても、日本人と話せばいいじゃんって大体の人は思うんですよ。日本にマーコムがいるんだから、その人と話せばいいじゃんって。でも結論から言って、海外のマーコムの人とコミュニケーションするには、英語力だけじゃ足りないんですよ。やっぱりその業界の考え方みたいなことを知ってないといけない。
なので、突っ込んだ話ができるまでに時間がかかるので、ちょっと興味本位で手を出しても、手間とお金がかかるわりにあんまり身にならないよね。ってことで撤退しちゃうパターンが多いんじゃないかと思います。
きゃC:
たしかに他国のビジネスの慣習なんて分からないですよね。その中でこうして道を切り開かれた佐藤さんたち、本当に熱くてすごいですね。
佐藤さん:
まぁ、過去形じゃなく。。
きゃC:
失礼しました(笑)
佐藤さん:
いえいえ(笑)
ただ、 やっぱり長く時間がかかるってことですね。自分もEDNの時代の蓄積があったからここまで来れたんですけど、多分グローバルPJTの他の人たちはようやく英語でやり取りができるぐらいまで来てくれていて、そこはすごい進歩だと思っているんですけど、その先までみんなで一緒に行きたいなと思ってるんですよ。きゃCさんも含めてです。そうするとね、アイティメディアのすごい長所になるんですよね。
きゃC:
なるほど。これ、佐藤さんの見立てではどれくらい息の長いプロジェクトになりそうですか? ゆくゆくはより拡大して本流になっていくのか、 今後どうなっていくのでしょうか。
佐藤さん:
本流にしたいんですよ。プロジェクトであるうちは、営業個人の目標も、プロジェクトの目標も、両方追わなきゃいけない。 だけど自分はグローバルの活動を100%にしたいんですよ。それはもう会社にそう宣言してるので、自分の上司も含めて全然それは理解してもらってるんです。
きゃC:
なるほど!
佐藤さん:
グローバルプロジェクトを、「グローバル部」にしたい。
きゃC:
おおお…!
でも、できそうというか。いつか絶対なりますね、きっと。
佐藤さん:
でも、正直やっぱりね、5年やってるときついですね。やっぱり両方のバランスを取るのがすごく大変です。
きゃC:
そうですよね、、営業の仕事だけでも普通は大変です。
ちなみに海外出張は行かれてるんですか?
佐藤さん:
行きたかったんですけど、プロジェクトが立ち上がった瞬間にコロナになっちゃって、行けてないですね。そろそろ行きたいです。できればプロジェクトメンバーを連れて行きたいぐらいなんですが、やっぱり今お金が・・・。円安の追い打ちもあってちょっとそこは頭が痛いですね。
現場のお話
きゃC:
過去の海外出張や、海外のセールスと話す時は、どんな話題で盛り上がるのでしょうか?
佐藤さん:
当然かもしれないですが、海外のマーケターって日本の生の情報を知らないんですよ。 だからそれを伝えるだけでもめちゃくちゃウケますね。 日本ではこういうのが今トレンドですよとか、この広告今伸びてますとか、逆にこの広告は使われなくなっちゃいましたみたいな。そういうことを話すと、「なるほど、だったら我々がやる時はこうすればいいのかな」というようなディスカッションが出来るんですよね。
きゃC:
確かに逆の立場で考えると、海外の広告トレンドについて生の情報を得る機会はあまりないですね。
佐藤さん:
そういう話をきっかけに海外の人が動いてくれるのは楽しいですね。
ちなみに、きゃCさんにも翻訳を手伝ってもらっているデジタルイベントの企画書や媒体資料もそこで活躍してくれるんですよ。そもそも日本のメディアってあそこまで詳細に資料を翻訳しないんです。なので、英語の資料を持っているだけで有利ですね。
きゃC:
そうなんですか?
佐藤さん:
なんだかんだでこのグローバルプロジェクトが立ち上がってから、 100以上の企画書や媒体資料を翻訳してきたんです。それだけ蓄積があると、たとえばお客さんから「いや、イベントいいんだけどちょっと予算足りないんだよね」ってなった時に「じゃあ、こっちはどうですか?」ってすぐに他の企画書や提案を出せるんです。
きゃC:
確かに。1個しか訳してないと、その提案がダメだったらもうダメですもんね。
佐藤さん:
はい、これは結構重要なことで、競合メディアと比較してもここまで翻訳資料を用意しているメディアはほとんどないと思います。
きゃC:
確かに、海外の人が日本語版資料を次々に出してきたらびっくりしますね、逆に言うと。
佐藤さん:
そう。で、用意がないと「いや、わかるんだけどさ、これ英語にしてくんないかな」って内心思われているのは顔に出てます、みんなね(笑)。
きゃC:
私のいつもの翻訳作業がこんなふうに現場を支えていると思うと、なんだか嬉しいです。
おわりに ~メッセージ~
きゃC:
最後に何かメッセージをいただけると嬉しいです。このプロジェクトは5年以上続いてきて、これからも脈々と…というところだと思いますが、佐藤さんの思いとしてはいかがでしょうか。新人にこれからもっと入ってきてほしいとか、もっと営業にも参加してほしいとか。
佐藤さん:
それはすごく参加してほしいですよね。英語の壁が、って思ってしまうことはあるかと思うんですが、やっぱり海外のお客さんとのコミュニケーションは増える一方なので、 そのノウハウを一緒に開拓しようという意味でも積極的に参加してほしいっていうのがメッセージですね。
編集後記
アイティメディアはZDnetから始まっただけあって、海外メディアとの統合・合併なども積極的に経験し、海外との関わりの中で成長してきた側面を強く感じました。
お話を聞いていくうちに、単なる社内プロジェクトではなく、アイティメディアの歴史に参加しているのだなという気持ちになりました。これからもグローバルPJTが沢山の人に支えられ、大きくなっていくことを私も願っています!
グローバルプロジェクトがいつの日か「グローバル部」になる日まで・・!
佐藤さん、貴重なお話を沢山ありがとうございました!
最後までお読みいただきありがとうございます。
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