徹底解説ハイブリッドイベント 開催方式や運営のポイント、事例を解説
最終更新日:2024/10/11
新型コロナウイルスの感染症対策でイベントのオンライン開催が広まりましたが、オフライン(リアル)での開催も少しずつ戻り始めています。その中で現在では、オフライン で行う際にあたり、現地へ参加できない方のためにオンラインを組み合わせる「ハイブリッドイベント」の形態も見られるようになってきました。ここでは、その方式・種類や運営方法について事例を交えながら解説します。
本記事でわかること |
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目次[非表示]
ハイブリッドイベントとは
ハイブリッドイベントとは、企業イベントを「オフライン(リアル)」「オンライン」の2つの方式を組み合わせて開催することです。
コロナ以降はオンラインイベントが一般化し、多くの企業が同方式でも十分に成果が得られることを実感しました。最近ではリアルイベントの開催が再び少しずつ増えていますが、そうした中で会場に行けない方がイベントに参加して情報収集できるよう、見込み顧客にアプローチできるチャネルとしてハイブリッドイベントを実施するケースが増えています。
ハイブリッドイベントとは、リアルイベントをオンラインにて同時開催する方式として言及されることも多いですが、実際にはさまざまな方法があり、目的に応じた構成や組み合わせ、開催方式の使い分けが可能です。
「リアルイベント」「オンラインイベント」の比較
まずハイブリッドイベントの詳細に触れる前に、ハイブリッドイベントを構成する2つの要素「リアルイベント」「オンラインイベント」を比較してみましょう。その違いをまとめると次のようになります。なお、ここでいうイベントは、「1000名以上が来場」、「複数の企業が出展」、「BtoB企業が主催」、「複数の講演セッションが同時間に行われる(展示より講演セッションがメイン)」のようなプライベートイベント※を例示しています。
※企業が自社の新規、既存顧客を対象として開催するイベント。
▼リアルイベント | |
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▼オンラインイベント | |
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ハイブリッドイベントは
オフラインとオンラインを相互に補完し合う
イベント開催側・参加側から見た主なメリット・デメリットは以下のとおりです。
リアルイベント |
オンラインイベント |
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イベント 主催社 |
メリット |
直接対面による理解促進 確度の高い顧客が多く、商談化しやすい |
幅広い層にリーチ可能 適切なフォローで商談化率アップも可能 |
デメリット |
実施コストや人的リソースが必要 |
関心度が低い参加者も多い |
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イベント 参加者 |
メリット |
担当との直接対話が可能 |
効率的な情報収集が可能 |
デメリット |
距離・地理的なハードルがある |
実機を見る、 口頭で講師や出展社に質問するのが困難 |
リアルイベントは会場スペースや開催時間、対応人員の制約から、接触できる顧客数が限られます。しかし、参加者にとっては対面でのコミュニケーションならではの密度の濃いやりとりや深い理解が得られるのがメリットです。一方でオンラインイベントの運営は物理的な制約に縛られないため、出展社・主催社は幅広い人々に参加してもらうことができます。
このように、オフラインとオンラインは一長一短であり、どちらが有効であるかどうかは、イベント出展する企業の狙い・目的によって異なります。そこで、1つのイベントの中でそれぞれの長所を享受するために、ハイブリッドイベントという形態が注目を集めています。
ハイブリッドイベントの実施パターン
上述したオフラインとオンラインの良さを得られるハイブリッドイベントは、大きく3つの実施パターンがあります。
- パターン1:リアルイベントのライブ配信
- パターン2:リアルイベントのオンデマンド配信
- パターン3:リアルイベントとは別にオンラインブースを設置
まとめると、主な決定事項は「リアルイベントの配信の有無」「配信方式の選択」「リアルイベントの配信以外のコンテンツ提供の有無」の3点です。
配信を行うパターン1と2の選択基準は、イベント演出・利便性のどちらを重視するかと費用がポイントです。ライブ配信であれば、イベント開催時だけの限定感を強く打ち出せますが、オンデマンド配信に比べ配信費用が大きく増えてしまいます。オンデマンドは参加希望者が都合のつく時間にアクセスできるのがメリットです。
オフラインとオンラインの使い分けも可能
ハイブリッドイベントの形式はオフラインとオンラインイベントの同時開催に限りません。目的に応じ、「同時開催」「分離開催」「タイムシフト開催」の3つ形式が取られます。
開催形式 |
同時開催 |
分離開催 |
タイムシフト開催 |
概 要 |
開催スケジュールを揃える |
適宜いずれかの形式を選択する(使い分けて効果を最大化) |
開催タイミングを別の時間帯・日程にずらす |
実施例 |
ライブ配信のボリュームと配信コスト オンラインイベントの開催期間 |
リード獲得にオンライン、有望客をリアルイベントへ誘導 基礎資料をオンライン提供、事例紹介や質疑応答はオフラインで |
日中はオンライン、
夕方以降はオフライン リアルイベントを開催、後日アーカイブ配信
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実施の ポイント |
ライブ配信のボリュームと配信コスト オンラインイベントの開催期間 |
隔日参加を確実にするコミュニティやリスト作り リアルイベントへの導線作り |
お互いの開催形式への誘導 |
このように、ハイブリッドイベントの開催パターンと形式を柔軟に組み合わせて、目的にあった無理のない設計・構成にすることができます。
◆オフラインとオンラインの同時開催方式
◆オフラインとオンラインの分離開催方式
◆オフラインとオンラインのタイムシフト方式
ハイブリッドイベントの運営のポイント
ハイブリッドイベントは2つの方式を組み合わせて開催するため、運営の負担やリスクが増大します。トラブル回避には、運営方法の工夫が必要です。ここで、ハイブリッドイベント全般や開催形式別に、運営における注意点をお伝えします。
オフライン、オンラインどちらに適しているかを見極める
リアルイベントの中にはオンライン代替に向くものと向かないものがあり、イベントに盛り込まれる要素によって、何をオンライン化し、何をオフライン化するかの選択が大事です。ふさわしい方式を選べば、準備にかかるリソースを削減し、得られる成果も高まります。
例えば直接対面することに意義があるものは、オフラインで行えるようにする必要があるでしょう。具体的な例としては、交流会やビジネスマッチング、商品体感(食品の風味、衣類の手触り、身体を使った実体験)、実演コンテストなどです。
逆に対面・集合の必然性が薄いものであり、参加者にとって物理的・時間的な障壁がネックになっているものは、オンライン化が向いています。例えば、実施内容が言葉、画像・映像による情報発信を多く含む場合、物理的な開催地近辺以外のエリアに顧客開拓を行いたい場合などです。
開催形式別のハイブリッドイベント運営のコツ
以下に開催形式(組み合わせ)別の運営のコツをまとめます。
開催形式 |
同時開催/タイムシフト開催 |
分離開催 |
来場者事務局 |
統一 |
都度開設も可 |
出展社事務局 |
統一 |
統一 |
登録システム |
登録データを一元管理できる 機能が望ましい |
2つの形式に対応するもの |
配信方式 |
リアルタイム配信の リスク対策は必須 |
オンデマンド配信が無難 |
ハイブリッドイベントの運営事務効率化には、一連のイベント単位での事務局設置や、オフライン・オンラインの両方に対応するプラットフォーム/システムの採用が望ましいでしょう。データを一元的に管理できるシステムならば、イベント実施後にリード情報を効率的に整理できます。
配信トラブルは致命的になりやすく、可能な限りリスクを回避するため、事前収録の映像配信が無難です。リアルタイム配信を希望するなら、ネットワークの安定性と実績のある業者か確認しましょう。万一に備え、バックアップ機材と要員の手配も検討すべきです。
ハイブリッドイベントの費用
ハイブリッドイベントのコストはさまざまな要素が絡むので一概にはいえませんが、リアルイベントをベースにオンライン環境を整備することから、オンラインイベントの費用に加えてリアルイベント分の費用がかかることになります。費用を左右する主な要因には、以下が挙げられます。
- オフライン開催の会場規模・期間(収容人数、部屋数)
- オンラインのプラットフォーム
- ライブ配信するセッション数
(配信以外にオンラインブースの設置などコンテンツ提供有無、実施期間、各種設定・運営の内製比率)
特に注意が必要なのがライブ配信です。ライブ配信は、失敗できないためネットワークの増強などさまざまな追加コストが発生します。リアルイベントで実施されたセッションのうちいくつのセッションをライブ配信するのか、アーカイブ配信だけにするのか、資料共有だけにするのかの違いだけでコストが大きく変動します。
オンラインでリッチな体験を提供するには費用がかかります。オンラインの企業ブースの設置や、リアルタイム配信の委託、配信機材管理、当日対応のスタッフ確保などです。自社リソースで賄えないケースが多く、展開するコンテンツの見極めや取捨選択も大事です。
ハイブリッドイベントのコスト削減に役立つ「協賛プログラム」の用意
ハイブリッドイベントを実施する際、費用を押さえるために有効なのは「協賛プログラム」を設けることです。協賛社を募ってハイブリッドイベントを開催することで、費用の一部を回収することができます。以下はアイティメディアが提供した協賛社向けのメニューとプラン例です。
◆協賛社向けコンテンツメニュー案
◆協賛社向けプラン例
ブース設置、資料掲載、見込顧客リスト提供、動画制作などを組み合わせたプラン設計が可能
リアルイベントの講演枠やオンラインイベントのライブ配信など全てのサービスを提供する協賛プランもあれば、イベント告知サイトへロゴ掲載したりオンラインイベントに資料掲載したりといったような、協賛社が増えてもコストが増えないプランを用意することもできます。
ハイブリッドイベントの協賛プランを設計する際、特にオンラインイベントについてはどれくらいの効果(例:リード数)を協賛社に返すことができるのか、また協賛費をいくらに設定すべきか、悩まれる担当者もいます。
ハイブリッドイベントの効果的事例
ハイブリッドイベントは、オフラインもしくはオンラインの単独開催よりも高い成果が得られます。実施パターンと得られる成果の例も含め、アイティメディアが協力した事例を紹介します。
ハイブリッドイベントで得られる効果
まずは、3社の事例から各々の企業の成果を見てみましょう。
- A社:参加者の増加、見込み客の可視化
- B社:東京以外の見込み客の獲得
- C社:コンテンツ閲覧者の増加
A社は従来のリアルイベントに加えオンラインイベントを同時開催し、参加機会が増加したことで参加者総数が以前より2割増えました。加えて、オンラインシステムの分析機能により、検討レベルの高い見込み客リストの可視化も実現しています。
B社では、東京以外からのリアルイベントの申込割合は24%でしたが、リアルイベント終了後のオンラインイベントでは一転、東京以外からの申込が49%と高くなり、地方企業のリード獲得に成功しています。
C社も来場者増加を実現した企業です。ハイブリッドイベントで講演を聴く手段を増やした結果、コンテンツ接触者が増加。リアルイベントの講演聴講は約3,400名、オンライン視聴ではその数を上回る約4,000名を記録しています。
実施パターンで見る効果の一例
先程、ハイブリッドイベントには3つの実施パターンがあることを示しました。ここではそのパターン別に、実際の企業が得た成果を紹介します。
リアルイベントのライブ配信とオンラインブース設置(NTTデータ様)
「リアルイベントのライブ配信」と「オンラインブース設置」を行った事例です。同社では2010年代初頭から年次カンファレンス(広報イベント)をハイブリッド開催し、オンラインにて登録者向けに講演の配信と各種資料などを提供しています。リアルイベントの来訪とオンライン行動を分析・検証し、その後のマーケティング活動に活かしています。
リアルイベントのライブ配信とオンラインブース設置(日本分析機器工業会様)
同じく、「リアルイベントのライブ配信」と「オンラインブース設置」を行った事例です。同団体はアジア最大級の分析機器・科学機器のイベント「JASIS」を定期開催しています。2017年からはハイブリッド方式で開催、オンライン開催は半年間の長期で開催しました。短期間の展示会ではアプローチできなかった来場者を獲得できたといいます。
リアルイベントのオンデマンド配信(BIPROGY様(旧:日本ユニシス株式会社))
「リアルイベントのオンデマンド配信」を行った事例です。同社は総合イベント「BITS2018」をハイブリッドイベント形式で開催しました。オンラインブースに各種コンテンツを掲載し、リアルイベントに参加できなかった顧客をフォロー。会場来場者の利便性も高まり、開設した6つのゾーンのブースすべてで、来場者に多く利用され好評を博しました。講演動画とは別に、各ブースの紹介動画もリアルイベント当日に撮影し、オンラインブースに動画を設置しました。
ハイブリッドイベントの検討
リアルとオンラインの特性を踏まえ、目的を明確に
ここまで触れてきたように、ハイブリッドイベントは実施の手間が大きくノウハウも必要であり、費用も少なからずかかってきます。ノウハウが十分にない場合は、オフラインとオンラインどちらにも実績のある会社に早めに相談することが有効です。その際に、オフラインとオンラインそれぞれどのような目的を定めるのか。双方はどの程度の配分にするのかなどを改めて整理しておくとよいでしょう。
まとめ
利便性と低コストが強みのオンラインと、直接アプローチできるオフラインをうまく組み合わせたハイブリッドイベントを取り入れていくことで、顧客の認知と販売機会拡大が期待できます。