製造業のマーケティング施策 現状の課題から戦略事例まで解説
最終更新日:2023/8/14
機械関連メーカー、電子部品メーカーなどさまざまな製造業で営業・マーケティング活動のオンライン化が進みつつあります。製造業(メーカー)はWebマーケティングにどう取り組むべきなのか、先行事例もあわせて紹介します。
本記事でわかること |
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マーケティングとは
そもそも「マーケティング」とは、自社商材が売れる仕組みを作るための一連の活動のことをいいます。「デジタルマーケティング」は、デジタル領域のあらゆる技術や方法を用いたマーケティング手法のことを指し、そのなかでも主にWebサイト上で顧客とのコミュニケーションを図ることを「Webマーケティング」といいます。
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マーケティングを実施する目的
マーケティング活動の目的は、以下の通り3つ挙げることができます。
- 自社商材を広く知ってもらう(認知獲得・向上)
- 自社商材に興味・関心を持ってもらう(見込み客の獲得)
- リード(見込み客)の購買・検討意欲を高める
マーケティングの重要性
まだ自社商材についてよく知らない情報収集中の見込み客に向けて、導入することによってどんなメリットがあるのかを魅力的にわかりやすく伝え、知ってもらうことが重要です。
なかでも意識したいのは以下の2点です。
- 情報収集中の、より多くのリード(見込み客)に向けて自社商材を魅力的にアピールする
- 自社商材に関心のあるリード(見込み客)を育成(ナーチャリング)し、効率的にアプローチする
製造業では「製品・サービスの導入を検討する担当者」、「導入後に実際に製品・サービスを利用する担当者」、「製品・サービスの導入を決定する担当者」が同じとは限りません。 そのため、製造業のマーケティングでは担当者ごとの役割やニーズを把握し、それぞれにあったアプローチで自社商材を知ってもらうことも必要になります。
製造業のBtoBマーケティング活動を取り巻く2つの課題
製造業が抱えるBtoBマーケティングの課題は2つあります。
1.新規顧客を開拓するためのマーケティングノウハウが少ない
多くの製造業では既存の取引先からの受注に頼る傾向があり、 特にBtoB企業で特定の業界や用途に限定された製品を取り扱う場合、 顧客も限定されやすくルート営業が中心になっているケースも多く存在しています。 そうした企業では、常日頃から新規顧客を開拓するためのマーケティングノウハウを十分に有していないケースもあります。
2.見込み客や顧客との接点をリアル(フィジカル)の展示会出展に代表される対面でのマーケティング活動に依存しがち
BtoB製造業ではニッチな商材を取り扱っていることが多く、インターネット上で検索される回数が少なくなります。 検索回数が少ないということは、リード(見込み客) がインターネット上にあまり存在せず、デジタルマーケティングの効果が薄れてしまいます。 そのため、見込み客や顧客との接点をリアル(フィジカル)の展示会出展に代表される対面でのマーケティング活動に依存する企業が多く、デジタルマーケティングが浸透しにくくなっています。
製造業のBtoBマーケティングにWebマーケティングを取り入れるメリット
デジタル技術によって既存のビジネスモデルに影響を及ぼす新興企業の台頭、 新型コロナウイルスのような予測不可能なパンデミックによるグローバルなサプライチェーンのリスク、SDGsや環境保護を目的とした各国の規制強化など、製造業を取り巻く環境は急速に変化しています。 BtoB取引が中心の製造業も今後は積極的な新規顧客開拓が必要とされてくるでしょう。
コロナ禍においては、従来まで訪問して行っていたヒアリングや商談が困難になり、 製造業の営業・マーケティング活動に大きな影響を与えました。 リード(見込み客)の獲得や商談化率の低下、 受注・成約までのリードタイムの長期化など、製造業のBtoBマーケティングには課題が山積しています。
1 |
新規リード数の減少 |
・展示会やオフラインのセミナーが中止 |
2 |
商談化率の低下 |
・獲得したリードの電話番号が会社の番号のため不通 |
3 |
受注までのリードタイム長期化 |
・訪問によるプレゼン、クロージングができないので、受注までのリードタイムが長期化 |
4 |
マネジメント難易度の向上 |
・案件情報の共有や育成をリモートで行う必要があり、戸惑う企業が多い |
製造業におけるBtoBマーケティングの課題
そこで検討すべきなのがWebマーケティングです。 Webマーケティングは非接触であるために感染症対策となるほか、場所や時間の制約に縛られないメリットがあります。
もちろん、それは従来の営業・マーケティング活動を完全に代替するものではありません。 Webを駆使したオンラインの営業・マーケティング活動を従来のオフラインの営業・マーケティング活動とうまく組み合わせることで、 より効率的に新しい案件・商談を生み出すことができるようになります。 また、コロナ禍が収束してもWebマーケティングの重要性は変わることはないでしょう。
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製造業におけるWebマーケティング戦略の2軸:「リード獲得」と「リードナーチャリング」
では具体的に、Webマーケティングをどのように行えばよいのでしょうか。オウンドメディアでの情報発信、広告出稿、オンラインイベントの実施、メールマーケティングなどさまざまな手法がありますが、まず押さえておきたいのが、「新規リード(見込み客)獲得」と「リードの育成(以下、リードナーチャリング)」という2つの軸です。営業の案件数・商談数を維持するには、まずはリードの母集団(ハウスリスト)の形成に努め、自社商材に関心のあるリード(具体的には名刺情報など)をオンラインで収集する必要があります。
製造業マーケティングにおける「リード獲得の基本」
リードをオンライン上で獲得する方法がいくつかあります。代表的なものに以下があります。
- リスティング広告
- 資料ダウンロード
- メルマガ広告
- バナー広告
- メディアへの記事掲載
- オンライン展示会出展
これらの手法およびオンラインリード獲得方法は以下の記事で詳しく解説しているので、ご参照ください。
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製造業のBtoBマーケティングでは、上記の中でもオンライン展示会への出展を活用されているケースが多いようです。もちろん、どの方法が成果を上げるかは企業によって異なるので、さまざまな方法を試しながら検証していく必要があります。
製造業マーケティング手法:リード獲得の方法(左図)とオンラインリード獲得の手段(右図)
製造業マーケティングに欠かせない「リードナーチャリング」とは
リード獲得のほかに、製造業のBtoBマーケティングにおいて重要になるのがリードナーチャリングです。
そもそも、リード獲得施策を行えばすぐに案件・商談につながるリードを十分に得られるだろうと考える方もいるかもしれませんが、実際には必ずしもそうなりません。自社製品への購買意欲とリードの関係性を考えると、オンラインマーケティング施策で獲得できるリードは、購入検討のステージにおける「潜在層」または「準顕在層」であることが多いです。
オンラインのリードはリアル展示会の会場ブースで直接話しかけてきたリードや、自社のWebサイトに自ら問い合わせてきたリードと異なり、商材への興味・関心度はやや低い傾向にあります。つまり効果的なWebマーケティングを実現するには、時間をかけてリードを育成(ナーチャリング)してアプローチしていくことを前提に考えるべきでしょう。
Webマーケティングへ取り組んでまだ日が浅い方の中には、上記のやり方を「非効率ではないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、良質なリード(購買意欲が高い、理想的な潜在層)をはじめから大量に集めることはそもそも現実的に困難であるか、できたとしても多額の費用がかかってしまいます。
一方、オンラインのマーケティング施策で獲得したリードはWeb上で情報収集している層であり、その後メールなどオンラインでのアプローチに反応がしやすいと考えられます。そうしたメリットを考えると、Webマーケティングでは大量にリードを獲得して母数を増やし、そこからアプローチ対象となる顕在層や明確層を見極めていく方が、むしろ効率的です。これは製造業のBtoBマーケティングでも例外ではありません。
自社商材への検討度・関心度に応じたリードの分類例。
顧客育成の母体となる一定数の新規リードを継続的に獲得し、フォロー・育成することが重要
製造業マーケティングにおすすめしたい具体的な2つの施策
ここまでリード獲得とリードナーチャリングの基本を簡単に解説しました。これら2つそれぞれに対応する施策として、製造業におすすめなのが「オンライン展示会の出展」と「Webセミナーの実施」です。
数ある施策の中でもこれらを推奨する理由として、BtoB企業を中心とした製造業では、従来からのマーケティング施策として、展示会への出展やオフラインセミナーを開催している企業が多いという点が挙げられます。それらをオンラインに移行することで、これまでの施策を維持しながら自然にWebマーケティングの実践へとつなげることができるはずです。
これらを踏まえ、以降からはBtoBマーケティング施策としてこれら2つをそれぞれ詳細に解説していきます。
オンライン展示会出展によるリード獲得 押さえるべきポイント3選
オンライン展示会は大量のリード獲得に最適
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オンライン展示会のユーザーインタフェースは、メニュー画面から目的のコンテンツをたどって閲覧するものもあれば、リアルな展示会を模した3D CG画像をつかってバーチャルな会場を画面上で進める形式のものもあります。後者は「バーチャル展示会」とも呼ばれます。 |
オンライン展示会上で提供されるコンテンツには、講演動画のほかに、出展企業が提供するPDF資料や動画資料なども用意されています。参加者の視点としては、オフラインの展示会と同様に、1つの展示会で複数企業の多様な講演や資料を視聴・閲覧できることで自身が関心あるテーマに関して効率的な情報収集を行えるメリットがあります。
出展者側の視点として、オンライン展示会は自社が単独で開催するオンラインセミナーに比べて大規模な集客を見込みやすいメリットがあります。言い換えれば、「自社単独では集客力に自信はないが一度に多くのリードを獲得したい」と考える企業にとって適した施策です。
(1)オンライン展示会とオフライン展示会の比較
オンライン展示会とオフライン展示会の比較は以下の通りです。
オンライン展示会 |
オフライン展示会 |
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メリット |
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デメリット |
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オンライン展示会では、参加者は場所を問わずに参加ができるために参加へのハードルが低く、出展者側はより多くの見込み客にアプローチできます。なお、展示会によっては、オンラインという特性を生かして行動・視聴ログの分析を行うことができます。また、参加者とのチャット機能やアンケート機能なども備えている場合があり、直接コミュニケーションを行ったり参加者の反応を確かめたりすることもできます。
もちろん、従来のオフライン展示会においても、オンライン展示会と比較すると参加のハードルは高いですが、その分、対面であることから参加者の反応を見ながら密度の濃いコミュニケーションができます。母数は減りますがより確度の高い見込み客を確保しやすいともいえるでしょう。
アイティメディアの製造業向けオンライン展示会紹介動画
(2)オンライン展示会出展効果を高めるコツ
オンライン展示会は、当然ながらオフライン展示会のように会場をなんとなく歩いている人へ能動的に声をかけたりして目を留めてもらうことができません。その中で自社のコンテンツを閲覧して興味を持ってもらうためには、これまで以上にコンテンツそのものの訴求力が必要になります。
その際、オンライン展示会にはさまざまな参加者が来訪することを想定し、会社案内資料やサービス紹介資料だけではなく、読者目線で役に立つノウハウ系のコンテンツなど、より潜在層、準顕在層に向けた内容のものも用意するのがよいでしょう。リードは獲得するだけでなく、その後に育てていくという前提のもと、見込み客の状態(購買意欲)に応じた多様なコンテンツを用意しておくことがおすすめです。
(3)オンライン展示会で獲得したリードへの考え方
オンライン展示会は、一度に多くのリードを集めることができるものの、対面で話せるオフライン展示会と比較してリードそれぞれに対する情報や声を収集しにくいという一面もあります。そのため、獲得したリードを次に生かしていくには、オンラインだからこそ収集が容易な行動ログやアンケートなどのデータをフル活用することが有効です。
その意味でも、オンライン展示会のリード獲得はその場限りの取り組みとして終わらせるのではなく、得られたデータと次のアプローチを連動させた一連のマーケティング施策の中で考えることが重要です。
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Webセミナーによる中長期的リードナーチャリング 押さえるべきポイント2選
オンライン展示会などに参加してもらったもののすぐには商談にならなかったリードは定期的にフォローし、そのリードが関心を持ったタイミングで商談に持ち込みたいものです。 |
![]() |
しかしながら製造業の商材は購入検討期間が長いものも多く、いつそのタイミングになるかはなかなか分かりません。また、同時に多くのお客様のフォローを行う営業・マーケティング施策には多大なコストやリソースがかかります。そこでおすすめなのがWebセミナーによる中長期的なリードナーチャリング施策です。
【1】Webセミナーとリアルセミナーの比較
Webセミナーとリアルセミナーの主なメリットとデメリットを挙げると以下のようになります。商談化という観点からすればリアルセミナーに分があるようにも見えますが、Webセミナーのデメリットはやり方によってはメリットに変えることができます。
Webセミナー |
リアルセミナー |
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メリット |
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デメリット |
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例えば、
- 情報収集段階が多い
→時間、場所を問わず視聴できるため、多忙なキーマン/高役職者も参加している
- 視聴者の反応を直接感じ取れない
→投票機能やアンケート機能を使って実施すれば視聴者の反応をつかむことができる
- フォローの優先順位をつけづらい
→視聴時間やQ&Aの投稿内容から視聴者の行動を分析したり、視聴データをMA(マーケティングオートメーション)ツールと連携したりすることでフォローの優先順位付けができる
などです。
ただしこういった効果的なWebセミナーを実施するには、しっかりと全体の計画を立ててマーケティング施策を実行する必要があります(これについては、次項で解説していきます)。
また、アイティメディアの調査(2021年6月)によると、Webセミナーは参加者の満足度が非常に高いことが分かっています。
参加者の96%が「良い体験だった」と評価したほか、受講者の83%が今後同じ内容のセミナーが開催される場合、「オンライン受講したい」と答えています。このことからもWebセミナーはこれからの製造業のマーケティング戦略において欠かせない手段だといえるでしょう。
Webセミナー経験者の多くが良い体験を実感している
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【2】製造業のBtoBマーケティングにおける
Webセミナー開催の課題・成功のポイント
製造業のBtoBマーケティングにおいて、効果的なWebセミナーを開催するために重要な点は以下の通りです。
- 目標(ゴール)の明確化
- コンテンツの企画
- 参加者フォロー体制の設計
- 集客スケジュール
ここでは上記の4点について、成果につなげるためのポイントを解説します。
1.目標(ゴール)の明確化
製造業のBtoBマーケティング活動の一環としてWebセミナーを行う場合、最も重要なのは、目標の明確化です。ともすれば、Webセミナーを実施することや満足度の高いセミナーを開催することに目標に置いてしまいがちですが、結果どれくらい案件・商談を生み出すことができるのか、つまり売上にどれだけ貢献できるかがBtoBマーケティング活動において一番重要なポイントとなります。
そのためには、Webセミナー実施後の参加者へのフォローの体制を考えたうえでどんなWebセミナーを企画するか考えることが大切です。
2.コンテンツの企画
目標が明確になったら、コンテンツを企画します。まずは、どんな商品・サービスの案件・商談を生み出したいのかによってターゲット像を決め、ターゲットに対する提案などを決めていきます。下のような表を埋めることができれば、企画の骨子がまとまるでしょう。
項目 |
記入例 |
タイトル |
なぜ展示会に出展しても商談につながらないのか? |
売上拡大の2大要素、「展示会商談」「個別商談」を生み出す「B2Bデジアナマーケティングとは? |
構成 |
記入例 |
ターゲットの 抱える課題 |
「集めた名刺情報が商談につながらない」 |
課題への共感 |
マーケティング施策のゴールは売上拡大ですが、売上拡大へとつなげる2大要素「展示会商談」と「個別商談」は、ただ展示会に出展するだけで増やせるものではありません。ではどうすればこの2大要素を増やすことができるのでしょうか? |
提案 |
そこで本セミナーでは展示会商談や個別商談数を増やす手法「B2B デジアナ マーケティング」をご紹介します。 |
提案による効果 |
B2B デジアナ マーケティングは、アナログのマーケティング施策を効果的にするべく、デジタルのマーケティング施策を織り交ぜる手法で、2018年にアイティメディアがご紹介を始めてから現在まで、多くのお客さまにお声がけいただいています。 |
セミナーを受ける 効果 |
B2B デジアナ マーケティングを活用し、集めた名刺情報を効率的に商談化させる方法を、事例を織り交ぜながら具体的に解説します。 |
コンテンツ企画に使えるフレームワーク
ここで、シナリオが決まらない、視聴者を惹きつける講演内容が分からないという場合は、第三者・読者目線で情報発信している各業界の専門メディアに依頼するのも手段となります。こうしたメディアに依頼する場合、企画や講演者の手配などを全部お任せにすることも可能です。
3.参加者フォロー体制の設計
できるだけ多くの商談・案件を生み出すためには、あらかじめ参加者フォローの体制を設計しておきます。参加者をフォローする優先順位をつけられるよう、以下のような点を決めておくと良いでしょう。配信後は参加者にメールを送信し、アプローチの優先順に営業・インサイドセールスからフォローコールする準備もしておきましょう。また、あわせて利用予定のシステムで設計した内容が実現できるかも確認しておく必要があるでしょう。
- Webセミナー申し込み時・終了時アンケート
- アンケートや投票内容、視聴時間などに基づいた優先順位付け
- 終了後に配信するメール(参加者、不参加者)
- フォロー用電話スクリプト、ヒアリング項目
- インサイドセールス・営業にリードを渡すタイミングと方法
4.集客スケジュール
企画骨子がまとまった後のおおまかなスケジュールとして、運営スタッフやセミナー講師のアサインは1カ月半前、集客期間は1カ月と見積もります。集客はオンライン、オフラインの両チャネルを用いて、メール、外部メディア広告のほかに、営業スタッフにも協力してもらいます。セミナーの早期申込者にはリマインドメールを送信し、確実な出席を促しましょう。
Webセミナーのスケジュールの目安
なお、ここで重要なのはセミナーを案内する母集団として、ハウスリストを拡充しておくことです。先述したオンラインでのリード獲得であらかじめ母集団(ハウスリスト)を形成しておき、確実に集客できるようにしておくことが肝要です。万一足りない部分については、外部のメール広告、SNS、バナー広告、チケッティングサービスなどを活用すること検討しましょう。
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製造業におけるマーケティングプロセスの重要ポイント3選
製造業におけるWebマーケティングの取り組みとして、ここまでオンライン展示会の出展とWebセミナーの要点を紹介してきました。次に、製造業におけるBtoBマーケティングの一連のプロセスで重視すべきポイントを紹介します。具体的には次の3点です。
- 多めのリード獲得
- 顧客接点の強化
- コンテンツの充実
1.多めのリード獲得
オンラインでのマーケティング施策でリードを集める場合、集める数は多めに考えておくべきです。今までの営業方法であれば、過去の経験から案件化率・商談化率の予測もある程度可能でしょう。しかし、前述の通り、オンラインでのマーケティング施策で集めたリードは自社および自社製品への関心がやや低い傾向にあり、すぐに案件・商談につながらない可能性があります。
獲得したリードに対して、定期的にメールなどで情報発信したり、インサイドセールスがコンタクトしたりしながら接触を続けてリードナーチャリングすることで案件化・商談化につなげる方法が効果的です。どれくらいの案件・商談を生みたいかによって、獲得するリード数の目安を決めると良いでしょう。
獲得したリードのうち商談化に至るのは一部であることを織り込んだうえで施策を行う必要がある
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2.まずは顧客接点を厚くする
オンラインでのマーケティング施策で獲得したリードは直接接触する機会が少なく、温度感の確認が難しい場合があります。上記の項目とも関連しますが、獲得したリードが大量である場合、営業担当者がすぐに電話して商談の打診を試みるのではなく、別のコンテンツの案内やセミナー案内を送付するなどリードとの関係強化に注力しましょう。
定期的につながっておくことで、今すぐには検討できない顧客が数カ月、数年経って検討できる状態になったときに、自社を第一に想起してもらえる可能性も高まります。
3.コンテンツの充実
上記にてリード獲得やリードナーチャリングの観点からオンライン展示会やWebセミナーについて触れてきましたが、それらだけで顧客のニーズや知りたい情報をカバーできるとは限りません。顧客自身が好きなときに自分に必要な情報収集をしてもらえるように、顧客の検討段階に応じたWebコンテンツを豊富に用意することが重要です。これは、オンラインでのマーケティング活動効率をアップできる観点だけでなく、顧客にとっての有用性を向上させ、自社へのエンゲージメントを強化する目的もあります。
コンテンツのポイントは自社独自の有益な情報を有しているかどうかです。インターネットが発達し、営業担当者に聞かなくてもさまざまな情報を自分で収集できるようになった現在、顧客が必要とし、かつ自社の独自性がある情報を提供してあげられるかが1つのポイントになります。自社のホームページはもちろん、外部メディアに依頼して記事作成してもらい、それを再利用するのも有効でしょう。
製造業におけるWebマーケティング事例
最後に、製造業の企業および製造業向けビジネスを展開する企業によるWebマーケティング事例を3つ紹介します。マーケティング上の課題を各社はそれぞれどう解決に向けたのでしょうか。
事例1:Webセミナーを活用して効果的な展示会に
各種の工作機械の製造・販売を行う三菱重工工作機械様(現:日本電産マシンツール株式会社様)はWebセミナーを活用することで、フィジカル展示会における諸課題を解決に導きました。
同社が抱えていた課題は2つありました。1つは、フィジカル展示会の自社ブースの集客数です。もう1つは、来場者がどのようなニーズがあって展示会に参加しているのかをわかりかねていたことです。
同社は展示会に先立ってWebセミナーを開催し、その中で展示会への出展を告知し、視聴者の8割に来場してもらうことに成功しました。また、Webセミナーで展示内容やその要点を先行して紹介したうえで、アンケートで視聴者の来場ニーズを把握し、検討度合いが高いと判断した視聴者にはあらかじめ展示会会場で商談ができるようブースを用意し、効果的な展示会の運営につなげました。
Webセミナー申し込み画面
事例2:新たなターゲット層の開拓に外部のリード獲得サービスを活用
主に自動車業界向けに組み込みシステム開発を支援するソリューションを提供しているベクター・ジャパン様の事例です。同社は、新規領域開拓を目指して新たなWebマーケティング施策の実施を決定、具体策としてオンラインリード獲得サービスの活用を決断し、自動車業界以外の良質な母集団(ハウスリスト)の創出に成功しました。
同社は新領域開拓を目指していましたが、自動車業界以外での認知度が低く、他業界の良質なリード獲得に課題がありました。主力の自動車業界以外にアプローチする体制が未整備だったうえ、インサイドセールスの電話も苦戦を強いられていました。そこで、まとまった新規リードの獲得には、外部サービスの活用がベストとの判断にいたりました。
同社はアイティメディアのサービスを採用し、わずか5日間で50件のリード獲得に成功するなど、スピーディーな成果創出とリード単価のコストパフォーマンスを評価しています。リード獲得で顧客とのコンタクト率が大きく向上、2020年度はリード案件化率が30%弱に達しています。
事例3:単独でリーチ困難な客層のアプローチに外部サービスを活用
同じく、製造業の顧客が多いCADソフトベンダーのソリッドワークス・ジャパン様の事例も紹介します。同社は、10年以上アイティメディアのオンライン展示会に出展し、自社単独のマーケティング施策でリーチできなかった層からのリード獲得に役立てています。
同社は商材特性もあってデジタルマーケティングを戦略上の重要施策と位置づけ、オンライン展示会にも意欲的に取り組んでいます。リード獲得単価の安さに加え、幅広い業種の企業を呼び込める媒体であることに着目してアイティメディアを選定しています。
オンライン展示会の出展により、商材レンジや成約ボリュームからマーケティングのメインターゲットとしにくいリードを獲得できているといいます。
自社でWebマーケティングの打ち手を尽くしていても、外部サービスの活用によってさらなる拡販が望める製造業におけるWebマーケティングの好例といえるでしょう。
まとめ
製造業のBtoBマーケティングでは、顧客開拓活動をリアルの展示会出展やセミナー開催、営業担当者による活動に依存している企業はまだまだ多いでしょう。しかし、営業活動を行う担当者の人的リソースの観点や、昨今のコロナ禍のような事態への対処の観点からもオフラインにすべてを依存した活動はリスクが残ります。
そこで今後、Webマーケティングの手法を用いたリード獲得、営業に渡すためのリードナーチャリングを積極的に取り入れるべきでしょう。その際に、本稿で紹介したオンラインリードに対する考え方やWebセミナー実施のポイントも参考にしながら試行錯誤を行い、ぜひ自社にあった最適なマーケティング戦略を見つけ出してみてください。