ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)の基礎知識と実践ステップ、事例を解説
ABMは、BtoB領域で注目されているマーケティング手法のひとつで、 「Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)」の略です。
本記事でわかること |
|
目次[非表示]
- 1.ABM(アカウント・ベースド・マーケティング) とは
- 2.ABMの3つのメリット
- 3.ABMの実践ステップ
- 4.ABM戦略の展開
- 5.ABMの実践事例
- 6.ABM成功のためのポイント
- 7.まとめ
ABM(アカウント・ベースド・マーケティング) とは
ABMは、「Account Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)」の略で、BtoB領域で注目されているマーケティング手法です。"アカウント"とは、個人ではなく企業や団体を指します。従来のマーケティング手法とは異なり、ABMは企業や組織をターゲットとして戦略的にアプローチするBtoBマーケティングの手法です。ABMでは、特定のターゲット企業内のすべてのキーパーソンと接点を持ち、その企業の問題点やボトルネックを理解して、適切な情報提供やコミュニケーションを行います。ABMは、特定のアカウントに基づいた施策を行うことでROI(費用対効果)を高めることが期待できます。
リード・ベースド・マーケティングとの比較
リード・ベースド・マーケティング(LBM)は、個人(リード)に焦点を当ててマーケティング活動を行う手法です。ABM(アカウントベースドマーケティング)とLBM(リードベースドマーケティング)を比較した場合の主な違いは、ターゲットとなる対象です。ABMは企業全体を対象にアプローチを行うのに対し、LBMは個人単位でリード(見込み客)を対象にします。
LBMは新規リードの獲得に重きを置き、メールマガジン、セミナー、Web広告、電話などを通じてリードナーチャリングを行います。不特定多数のリード獲得から、カスタマージャーニーに合ったコンテンツを活用して自社への興味や関心を高め、受注に結び付けていくためコストやリソースが分散しがちな「リード・ベースド・マーケティング」ですが、思いがけないターゲットから受注する可能性があるというメリットもあります。しかし、LBMでは製品やサービスの購入検討に多くの部門や人が関与している場合、受注に至らかったり、リードタイムが長くなることもあります。
一方、ABMでは企業を対象にアプローチするため、企業の質量や規模に焦点を当て、よりパーソナライズされたマーケティング施策が可能です。リード獲得の数を追うよりも、特定の企業に向けてコストやリソースを最適化した施策を展開できるので、効率的なマーケティング活動が可能です。
デマンドジェネレーションとの比較
デマンドジェネレーションは、新規案件創出と言われることもあり、リード(見込み客)を集め、温度感が高くなった段階で営業に引き渡し、案件を創出するためのマーケティング手法です。ABM(アカウントベースドマーケティング)では特定の企業をターゲットとする一方、デマンドジェネレーションでは一般的に大量のリードを獲得し、獲得したリードの中から営業活動の対象を絞っていきます。
ABM |
デマンドジェネレーション |
|
不特定多数のリード |
対象 |
特定の企業・団体や組織 |
リード(見込み客)個人単位 |
アプローチ単位 |
企業・団体や組織単位 |
網 |
イメージ |
銛 |
ABM(アカウントベースドマーケティング) とデマンドジェネレーションの比較
特定のターゲット企業に絞り込んだ施策を展開するABMを進めつつ、より効果的なマーケティング活動のためデマンドジェネレーションのプロセスを取り入れることもあります。
ABMの3つのメリット
マーケティングにABM(アカウントベースドマーケティング) を取り入れるメリットは主に3つあります。
- 受注につながりやすい見込み客へ効率的にアプローチできる
- 広告費や営業活動コストの削減につながる
- マーケティングと営業の連携をスムーズに進められる
1.受注につながりやすい見込み客へ効率的にアプローチできる
ABMではターゲットを絞った状態でマーケティングを展開していくため、リソースを最適化し、スピード感のある営業・マーケティング活動を進めることができます。
ABMでは、ターゲット企業内の複数のキーパーソンと接点を持つことを重視します。そのため、各部門の問題点やボトルネックを理解し、適切な情報提供やコミュニケーションを行うことができます。それぞれのターゲット企業についての理解を深め、ニーズや課題に合わせて個別にカスタマイズしたメッセージやコンテンツを発信するといったパーソナライズ化されたマーケティング施策が可能です。ターゲットアカウントへの的確なアプローチによってリーチしやすくなり、リード獲得の確率も高まります。
2.広告費や営業活動コストの削減につながる
ABMを導入することで、広告費や営業活動コストの削減が期待できます。従来のBtoBマーケティングでは、多くの見込み顧客を広く浅くターゲットとして扱い、その中からリードを獲得していく方法が一般的です。しかし、この手法ではリソースを費やしても受注に繋がらないことも多く、かけたリソースが無駄となってしまう場合があることが課題としてあります。
ABMでは、特定のターゲット企業に焦点を当て、そこにリソースを集中させるため、広告費や営業活動コストを効率よく使用することができます。例えば、メールマガジンやウェブ広告の配信も、特定の企業や導入関与者に絞り込むことで、高い効果を発揮します。これにより、費用対効果(ROI)の向上が期待できるのです。
3.マーケティングと営業の連携をスムーズに進められる
ABMでは、営業とマーケティングが共通の目標を追えるので連携がスムーズになります。リードベースドマーケティングの場合、マーケティングではリードの獲得数が目標になることが多いですが、営業は受注数を目標としていることが多く、追う指標が異なるため活動工程が分断されがちです。一方で、ABMでは見込み客のニーズや課題に対して理解を深めてアプローチしていくため、見込み客に対して発信するメッセージを統一させることができ、部門を超えた連携が進みやすくなります。マーケティング部門が収集したターゲット企業内の情報を営業部門と共有し、営業活動に活かすことで、より効果的な商談進行が可能となります。
ABMの実践ステップ
ABM(アカウントベースドマーケティング)を実践するためには、以下のステップを進めていく必要があります。
ターゲット企業の選定
ABMを成功させるための第一歩は、ターゲット企業の選定です。ターゲット企業を正確に定めることで、リード獲得や商談成立の可能性が高まります。選定の際には、企業の規模や市場シェア、業界内での影響力などを考慮します。また、自社製品やサービスが特に効果的であると考えられる業界や企業をピックアップすることも重要です。
導入関与者情報の収集
次に、ターゲット企業内の導入関与者の情報を収集します。ABMは個人ではなく企業を対象とするため、企業内の主要な決裁者や影響力のあるキーパーソンを特定することが重要です。部署名や役職、氏名、メールアドレス、電話番号などの名刺情報を収集し、この情報を基に各部門の問題点やニーズを把握し、パーソナライズされたアプローチを行う準備をします。導入関与者との適切な接点を持つことで、営業活動もスムーズに進展します。
カスタマージャーニーに沿ったコミュニケーション設計
次に、選定したターゲット企業に向けたコミュニケーションを設計します。カスタマージャーニーとは、顧客が情報収集から購入に至るプロセスのことです。ABMでは、ターゲット企業ごとにカスタマージャーニーを設計し、各ステージで適切な情報提供やコミュニケーションを行うことが重要です。
具体的には、企業の問題解決や利益向上に繋がる情報を提供し、企業内のキーパーソンの興味を惹きつけます。ターゲット企業が抱える課題やニーズに対して、適切な情報を提供し、関心を持ってもらえるよう発信するメッセージを検討しましょう。この一連のプロセスが円滑に進むことで、最終的に商談や受注につながりやすくなります。
カスタマージャーニーと、フェーズごとに実施すべき施策
以上がABM(アカウントベースドマーケティング)の実践ステップです。ターゲット企業の選定から、段階的に進めていくことで、効果的なABMを実現することができます。
ABM戦略の展開
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、特定の企業に対するアプローチを重視するため、特にBtoBマーケティングに適しています。BtoBの場合、企業間の取引が行われるため、個人単位ではなく、企業単位でのアプローチが求められるからです。ABMは、企業規模が大きく収益が見込める、知名度が高い、競合優位性のある企業に向いています。 |
リード獲得のためのアプローチ
ABMでは、リード獲得のためのアプローチが非常に重要です。従来のBtoBマーケティングでは、個人単位でリード獲得を行っていましたが、ABMでは企業をターゲットとした戦略的アプローチを取ります。特定のターゲット企業に対し、その企業内部の複数の関与者と接点を持ちます。これにより、各部門のニーズや課題を深く理解し、ピンポイントで適切なソリューションを提供することが可能です。
リード育成と選別のプロセス
ABMにおけるリード育成と選別のプロセスでは、まずターゲット企業内のキーパーソンを特定し、その人物たちの役割や導入検討プロセスに焦点を当てます。その後、各キーパーソンの関心や課題について情報提供を行います。これにより、単にリードを集めるだけでなく、リードを育成し、商談に繋がる確度の高いリードを選別することができます。
営業とマーケティングの連携
ABMでは、営業とマーケティングの連携が重要です。営業とマーケティングは、ターゲット企業に対するアプローチや情報提供方法を共有し、効果的な施策を展開することが求められます。また、営業がリードを追客する際に、マーケティングが提供する情報やコンテンツを活用することで、コミュニケーションの一貫性を保つことも重要です。この連携により、ターゲット企業へのアプローチが一貫したものとなり、各部門の課題に対して統一された解決策を提案できます。ABMを成功させるためには、このようにマーケティングと営業がシームレスに協力し、情報や戦略を共有することが不可欠です。
ダークファネルの活用
ダークファネルとは、リード獲得前、アノニマス(匿名状態)で製品やサービスに関する情報を収集しており、把握できない状態を指します。ABMでは、ダークファネルを理解し、ターゲット企業が関心を持っているであろうトピックや分野に関する情報を提供することで、リードを育成し、ターゲット企業の購買意欲を高めることもできます。
ABMの実践事例
ABM(アカウントベースドマーケティング)は営業担当者のスキルに依存せず戦略的かつ組織的にアプローチするために有効な手法です。アイティメディアが提供する「ABMレポート」を活用したことにより、成功している企業の実例を紹介します。
ファイア・アイ株式会社様
<課題>
主に企業のサイバーセキュリティ対策を支援するファイア・アイは、2018年当時、マーケティングの基本的な基盤や営業との連携プロセスが整備されていませんでした。マーケティング部門と営業部門でゴールを共有できておらず、適切なアクションを起こせていなかったのです。
<ABMレポート導入の背景>
同社には「ADR」というマーケティングと営業をつなぐ役割を置いていましたが、部門同士の仲介役としては十分に機能していませんでした。
そこで、ABMレポートの導入により、マーケティング部門と営業部門がお互いの役割を理解しうまく連携させることで、効率的に質の高い案件創出を目指しました。
<効果>
ABMレポートの導入によって、ADRを含めてマーケティング部門と営業部門の連携を強化、適切な営業タイミングを把握できるようになった結果、アポイントからの案件化率66%を達成することができました。
ABM成功のためのポイント
データドリブンな意思決定
成功するABM(アカウントベースドマーケティング) のポイントとして、顧客データの分析を徹底し、データドリブンに推進することが重要です。ターゲット企業の情報や顧客データを集約し、活用しながらコミュニケーション設計することで、ターゲット企業へのパーソナライズされた施策の展開が可能となります。また、ターゲット企業の行動データや購買履歴などを分析し、マーケティング施策の最適化を行うこともできます。顧客データやコミュニケーション履歴を一元で管理するためには、CRMツールや専用のABMツールを活用することが効果的です。
ターゲットに対する理解の深化
ABMの成功には、ターゲット企業に対する深い理解が必要です。ターゲット企業の業界や市場のトレンド、競合状況などを把握し、それに基づいた施策を展開することが重要です。また、ターゲット企業の意思決定プロセスや購買動機を理解し、キーパーソンを把握することも必要です。このためには、ターゲット企業とのコミュニケーションを密にし、関係を構築することが重要です。営業とマーケティングの連携が必要となります。
MA(マーケティングオートメーション)などのデジタルツールの活用
MA(マーケティングオートメーション)などのデジタルツールの活用も、ABMの成功に重要な戦略と言えるでしょう。
デジタルツールの活用によりターゲット企業の行動や興味を分析し、最適なタイミングで関連性の高いコンテンツを提供することで、エンゲージメントが向上し、リードの質が高まります。さらに、Web広告やメールキャンペーン、マーケティングオートメーションを組み合わせることで、効率的にリードを育成し、商談の機会を増やすことができます。
ABM(アカウントベースドマーケティング)は、リード獲得においても非常に効果的なアプローチです。ABMは特定のターゲット企業に焦点を当て、パーソナライズされたマーケティング戦略を展開することで、高品質なリードの獲得も期待できます。
まとめ
ABM(アカウントベースドマーケティング)は企業や組織をターゲットとし、戦略的にアプローチするBtoBマーケティングの手法で、ROI(費用対効果)を高めることが期待できます。
ABM戦略を成功させるためには、まずターゲット企業を選定し、その企業内のキーパーソンを特定することが重要です。加えて、マーケティングと営業の連携を強化することも欠かせません。ABMは企業単位でのアプローチとなるため、各部門が一丸となって取り組む必要があります。例えば、営業が現場で得た情報をマーケティングにフィードバックし、それを基に新たな施策を立案することは効果的です。
ABMでは特定のアカウントへのアプローチが主となるため、リソースを効率的に使うことも可能です。ただし、それだけでなく、施策の結果を定期的に分析し、改善点を見つけ出して次のアクションに活かしていくことが、継続的なABM戦略の成功につながります。
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責はデジマのあれこれ編集部に帰属します。