デジタル地理空間データ、人流データなどの多様なビッグデータを分析・提供するジオテクノロジーズ。同社はアイティメディアのデジタルイベント運営サービスを活用し、パートナー向けマーケティング施策を展開中だ。同社はどのように施策を実施しているのか。担当者に話を聞いた。
導入背景と課題 |
パートナーアライアンスビジネスの推進 |
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導入内容 | デジタルイベント開催のワンストップ型サービス |
利用による効果 | イベント開催のノウハウが得られるなど、自社におけるマーケティング施策のブラシュアップ |
1994年5月にマルチメディア・ソフトウェア開発制作会社として創業したジオテクノロジーズ。カーナビゲーションを軸とするオートモーティブ分野に特化したデジタル地図の制作からGIS(地理情報システム)分野に事業を拡大。近年は地図コンテンツに加え、ポイ活アプリ「トリマ」の提供などアプリケーションやマーケティングなどのサービス領域も手掛けている。
現在、同社では「オートモーティブ」「エンタープライズ」「マーケティング」「コンシューマー」の4事業を主要ビジネスと位置付けている。長い間培ってきたデジタル地理空間データに加え、リアルタイムに蓄積される人流データ、購買データ、リサーチを活用したアスキングデータなどの人の動きを掛け合わせたビッグデータ分析によって「今この瞬間のインサイト」を提供することを目指している。
実際、ジオテクノロジーズが保有する付加価値の高いデータは、自動車や物流/運輸、小売り/飲食、ITサービス、消費財、公共分野などで幅広く活用されている。安全な自動車社会の実現のみならず、パートナーとともに創出したソリューションは店舗開発や需要予測、防災対策やスマートシティーへの応用、リサーチデータを活用した広告出稿サービスなど非常に多岐にわたる。
同社のストラテジックパートナー営業本部 本部長の小柳津 里奈氏は、パートナーアライアンスについて以下のように説明する。 「当社は以前、直販・再販営業を明確に分けていなかった。それぞれで目的や戦略が変わるため、しっかりとパートナーアライアンスビジネスを立ち上げて推進する必要があった」(小柳津氏) ジオテクノロジーズの事業拡大に欠かせないパートナーアライアンスだが、近年までパートナー企業向けのマーケティング活動は展開していなかったという。そこで小柳津氏はパートナービジネスの立ち上げと並行し、自身のIT業界における経験を踏まえてパートナーとの共催デジタルイベントによるマーケティング施策の実施を決めた。 「これまで培ってきたノウハウをうまく当てはめることができれば良いと思った。ただ、デジタルイベントは経験がなく、いろいろなことが初めての取り組みだった」(小柳津氏)。 |
ストラテジックパートナー営業本部 本部長 小柳津 里奈氏 |
しかし、同社にはパートナー向けマーケティングの役割を持つ担当者がいなかった。そこで白羽の矢が立ったのが、同社 営業統括本部 ジオソリューション営業本部の藤波 紹子氏だ。藤波氏はもともとIT業界でパートナーアライアンス部門において営業企画を経験した後に同社に中途入社、GIS領域のパートナー営業担当者であり、かつ入社して間もない時期での指名だったという。
営業統括本部 ジオソリューション営業本部 藤波 紹子氏 |
同社はパートナー向けマーケティング施策として、アイティメディアが提供するデジタルイベント開催ワンストップサービスを活用した。同サービスはデジタルイベントの企画から集客、収録当日のモデレート・運営、配信までをワンパッケージで提供するというものだ。サービスの活用目的として、藤波氏は「自社製品のマーケット需要を増やしたい」点を挙げる。 「通信領域など既に人流データのソリューションを提供しているベンダーは他にもいる。ただ、当社はトリマアプリによるデータ取得など、より精緻化した人流データを提供できる。従来の基地局データとは異なる、より粒度の高いデータの優位性や製品の良さを市場に伝えたい」(藤波氏) また、小柳津氏は「従来の地図コンテンツという既存の顧客層だけではなく、ジオテクノロジーズという会社自体を知らないユーザーとの接点も持ちたい。当社の事業全体の拡充にIT業界への進出は欠かせないと思っている」と説明する。その上で同氏は「アイティメディアには、幅広い市場・ターゲットへの訴求力があると考えた」とのことだ。 |
同社は2021年にパイオニアの全事業の継承、2022年の社名変更などを実施。そうした変革期の中で「自社のハウスリストにも限界がある。ぜひメディアの力添えがほしかった」(藤波氏)と、同サービスの活用効果への期待は高かったことが伺える。
ジオテクノロジーズでは現在、アイティメディアの協力を得ながら計3回のオンラインイベントを展開中だ。
まず、第一弾は2023年12月「リテールDX、『人流』を制する者はマーケティングを制す~位置情報データ活用の最先端を学ぶ」をメインテーマとして開催した。リテール分野におけるデータドリブンマーケティングの最新動向や事例を解説するとともに、それを実現に導くソリューションを紹介するという内容だ。藤波氏はイベントの趣旨を以下のように説明する。
「どんなに製品が良くても、実際の活用イメージが分からないと市場に受け入れられないと思っていた。このイベントでは実際にリテール分野でどう使えるか、どのようなメリットがあるかを分かりやすく伝えたかった」(藤波氏)
同イベントでは、基調講演となる業界のトップリーダーを招いたパネルディスカッションを皮切りに、協力企業であるunerry、パスコの講演を実施した。ITmedia ビジネスオンライン「リテール大革命」の編集責任者である岡安 太志が、イベントの企画骨子立案やパネルディスカッションのファシリテーターを務めた。藤波氏はアイティメディアの企画立案を以下のように評価する。
「私たちは自社の製品自体はよく理解しているが、市場からどう見えているのか、どうすればより魅力的に見せることができるかについて客観的な観点でアドバイスしてもらえた。漠然としたイメージから、どのような言葉を使えば市場に伝わるかについて、優れたワードチョイスでしっかりとまとめてもらえた」(藤波氏)。
また、コンテンツの制作段階では藤波氏は「パートナー向け施策を立ち上げたばかりだったので、いったん大きく広げた風呂敷に対していろいろと質問を投げかけてくれたことで、重要な核の部分を引き出してもらえた」と感じたという。その結果、「内容に深みとまとまりが生まれ、より興味を引かれる面白いコンテンツを作ることができた」(藤波氏)と満足しているようだ。
さらに収録当日の編集部によるファシリテーションに関して、藤波氏は以下のように語る。
「岡安さんが口火を切ってくれたことで、データの種類やデータ活用の効果など視聴者の理解をより促してもらえた。さらにスピーカーに対する的確な質問が重要な内容を引き出してくれたと思う。その後のパートナーのソリューションにも視聴者の興味をしっかりとつなげられる“完璧な基調講演”を実施できた」(藤波氏)
一方、反省点として、藤波氏は「実施日時が明確に決まっている案件だが、企画内容やイベントの方向性を確定させるまでに少し時間がかかった」ことを挙げる。「リテール分野のメインターゲットになり得る層をより集めるために、対象範囲を広げたり、企画内容を膨らませたりといった検討が必要だった」(藤波氏)
その後、ジオテクノロジーズは2024年8月に第2弾イベントとして「都市デジタルツインと人流解析で構築する新時代のスマートシティー~ 見える化で広がる防災、観光、都市計画の街づくりの未来 ~」を開催した。建築・建設業界向けメディア「BUILT」の編集部が主催となり、ジオテクノロジーズに加えてNTTデータ、NECソリューションイノベータなどのパートナー企業が協賛企業に名を連ねた。
同イベントは、自治体の行政担当者や建設業界、観光関連ビジネスなどを主なターゲットとして実施。国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU」の統括担当者による基調講演に加え、協賛企業3社がリレー形式のセッションで講演した。スマートシティーにつながる都市データの活用に着目し、3D地図情報や人流データを用いた災害対策や街の賑わい創出などの先進事例を紹介している。
これまで実施したイベントでの獲得リードに対する評価として、藤波氏は以下のように説明する。「1回目のイベントではリスト数としては十分ではあるものの、購入意欲・検討段階などを考慮するともう少しリーチできるターゲットが多いとうれしかった。一方で2回目のイベントでは、官公庁など自社で入り切れていない大規模な組織へのリーチもできた」(藤波氏)
本取材時現在、ジオテクノロジーズとアイティメディアでは2024年10月開催予定の第3弾イベントへの準備を進めている。「データ活用×リテール改革セミナー 今日から実践! データドリブンな需要予測と経営戦略」と題した同イベントでは、小売業における人流データの価値を伝える基調講演のほかに、ジオテクノロジーズの人流データと講演企業のデータ活用ソリューションを組み合わせた先進事例をリレー形式のセッションで紹介する予定だ。
利用中のアイティメディアのデジタルイベントサービスの活用メリットについて、小柳津氏は以下のように評価する。
「パッケージによる提供は、リーズナブルである点が魅力。パートナー向けマーケティング施策に関してある程度の経験値を持っているつもりだが、個々人でできることは限られてしまう。イベント運営に関しても人的なリソース面での不安もあるが、限られたコストの範囲内で3回のイベントを開催できるのは非常にありがたい」(小柳津氏)
また、藤波氏は「イベント開催のノウハウが得られるなど、自社におけるマーケティング施策のブラシュアップにつながる成果が出ている。今後は、オンライン/オフライン形式を併用するハイブリッド型イベントも1つの選択肢になり得る」と手応えを感じているとのことだ。
さらに小柳津氏は「取り扱うテーマや切り口、登壇するパートナーによって集客できる客層に無限の可能性がある。今後は、コンサルティングファームとの共催なども視野に入れた企画を練りながら、狙ったターゲット層により満足いただけるコンテンツを作っていきたい」と語る。
同社は長年培ってきた付加価値のあるビッグデータを強みに、社会貢献につながる多くのソリューションを今後も創り続けていくことだろう。その実現に向けて、より多くのパートナーとの協業を進めるためのマーケティング施策を展開していく方針だ。
また、2021年にリリースし1900万ダウンロードを超えるポイ活アプリ「トリマ」に代表されるアプリケーションのユーザーとの接点により、人の移動やその背景にある意識といった現実世界の状況「インサイト」をリアルタイムで把握できるようになってきている。(2024年9月時点)
これらの人流をはじめとする膨大なビッグデータと、約30年間整備してきた地理空間データを掛け合わせて最先端技術を用いて分析することにより、「今この瞬間のインサイト」を提供し、より快適でサスティナブルな世界の実現という社会貢献を目指している。
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