B2B向けセキュリティ製品・サービスの開発・販売を展開するビットフォレスト。同社はアイティメディアの長期リードジェンサービスを活用し、今アプローチすべきリードを即時に判断するとともに、継続的なコミュニケーションでリード獲得から1年後に案件化するなど、短期・長期の案件創出を実現しているという。同社のメディアを活用したリード獲得施策の詳細とフォローアップ施策について話を聞いた。
導入背景と課題 | 脆弱性対策の分野で国内の導入実績が豊富であるが、サービスの認知度や競合他社との差別化などが伝わりづらい点もあった |
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導入内容 | 長期リード獲得サービス/閲読時アンケート |
利用による効果 | 短期・長期の案件創出 自社開催オンラインセミナーへの申し込み数増加 |
2002年の創業以来、最先端のセキュリティ技術の研究開発とさまざまな企業のWebサイト開発・運用事業を展開してきたビットフォレスト。近年激化するサイバー攻撃からWebアプリケーション/Webサイトを防御するセキュリティサービスを開発・提供するとともに、セキュリティ専業企業への技術支援などを行っている。
ビットフォレストが開発するクラウド型Webアプリケーション・ファイアウォール(WAF)サービス「Scutum」は、長年国内クラウド型WAF市場で多くのシェアを獲得してきた。そして、Scutumに加えて同社のセキュリティ事業の主軸を担うのが、クラウド型Web脆弱性診断ツール「VAddy」である。
Scutumが運用段階でWebアプリケーションに対する不正アクセスやサイバー攻撃などのさまざまな脅威から保護するのに対して、VAddyはアプリケーションの設計・開発段階から脆弱性を診断することでWebアプリケーションのセキュリティを強化できる。
ソフトウェアの複雑性が増す現在、Webアプリケーションを設計・開発する過程で生じるセキュリティ上の欠陥である脆弱性は多様化している。近年は、そうした脆弱性を狙われるサイバー攻撃の危険性が高まってきた。脆弱性診断は、それらの有効な対策として注目度が高まりつつある。
ただ、脆弱性診断を実施するにはセキュリティの専門知識が求められたり、Webアプリケーション開発に携わる関係者間の認識のズレや、スケジュール面・コスト面などの課題が出てくることも多い。VAddyは、セキュリティ診断の経験がなくても手軽に検査できるツールとして、そうした課題解決に貢献できるという。
セキュリティ事業のWebマーケティングを担当する同社のマーケティングユニット ユニットリーダーの林 真理恵氏は「VAddyは脆弱性対策の分野で国内の導入実績が豊富であるにもかかわらず、サービスの認知度や競合他社との差別化などがターゲット層に伝わりづらい点もあった」と事業展開における悩みを打ち明ける。 そこで、同社はVAddy事業の売り上げ拡大や認知度向上を目的として、リード(見込み客)を活用するマーケティング活動に着目。さらにリード獲得に向けて同社は、自社セミナー/ウェビナーの開催・運営、オウンドメディアでのコンテンツ提供に加えて、主要メディアのリード獲得サービスの活用を検討した。 その結果、アイティメディアのリード獲得サービスを活用し、2021年から約2年間と長期にわたるリード獲得/フォローアップ施策の実施を決断。2022年10月からは、6本のホワイトペーパー(WP)と6本の動画コンテンツを用いてリードを獲得し、そのデータを基にメールを中心とするマーケティング活動を展開した。 |
「アイティメディアのリード獲得サービスを活用したことで、VAddyが徐々に認知されるようになり、それを起点とするマーケティング/営業活動を地道に継続することで施策前よりも大きく売り上げが伸びました」(林氏)
B2B企業の多くがWPを活用する中、ビットフォレストはコロナ禍で急速に普及したオンラインセミナー(ウェビナー)を積極的に活用したマーケティング施策を展開し、着実に成果を上げた企業だといえる。
ビットフォレストのマーケティング機能は、自社サービスの認知拡大やリード獲得施策を提案・運用する林氏を中心に、各サービスの担当者、SEO/SEMの担当者、リード収集/管理を担うCRM(顧客管理システム)を運用する担当者で構成される。
VAddyのマーケティング施策としてアイティメディアのサービスを活用した背景について、林氏は以下のように振り返る。「これまでと同じことをやっているだけでは、VAddyの売り上げにはつながらないと考えていました。ただ、自社だけでは無理であると判断してメディア施策を検討するに至りました」(林氏)
林氏は、メディアのリード獲得サービスを活用する上で、まずターゲットを明確に定義することから始めたという。また、「そのターゲット層が必要としている、なおかつ自社が伝えたい情報をしっかり届ける施策をやりましょう」と社内で提案したことを明かす。
「マーケティングのテクニックでうまく見せれば、それなりに売れる商材もあるかもしれません。しかし、当社の製品・サービスはB2B向けセキュリティ分野であるため、誇張した表現は使えません。また、訴求したいメッセージがなかなか伝わりにくいと認識しています」(林氏)
そして、主要なメディアのサービスを検討して話し合いを重ねる中で、「当社が実現したかった『伝えたいことを伝えられるとともに認知度を向上したい』ということと最も合致していたのが、アイティメディアの長期的なリード獲得サービスでした」と語る。
また、林氏によると「リード獲得サービスの活用を提案した当初、その導入効果を疑問視する雰囲気が社内にあった」という。ただ、今回のプランは獲得リードのターゲット属性と件数が保証されるため、「効率的で確実なターゲットとなるリードを獲得できる点を訴求しました」と林氏は社内提案時の状況を説明する。
ここからは、同社におけるマーケティング用のコンテンツ制作の流れを簡単に紹介しよう。まず、WPについては林氏自らコンテンツを書き上げているという。それを基に、お客さまの声と自社がマーケティングの観点で打ち出したい内容との整合性を営業担当者がチェックしているという。同社の主要なターゲット層は、企業の情報システム部門の担当者と決裁権を持っている上層部だ。
林氏は「あまり啓発的な内容にしないようにしています。コンテンツを閲覧する方は『業務上の課題や現状を改善したいけれど、どうすればいいのか』と悩んでいることが多いです。どうしても自社の製品・サービスにも触れることになりますが、『今、お悩みの課題をこう解決できますよ』という具体的なメリットを入れるようにしています」と打ち明ける。
また、ターゲット層が抱える課題の洗い出しは、アイティメディアの会員アンケートを参考にしているという。「アンケート結果からセキュリティ担当者の現状を理解したり、タイトルやコンテンツの内容が今のニーズと合致しているかを確認しています」(林氏)。
一方、動画コンテンツは自社開催のオンラインセミナーをベースとする。ビットフォレストは毎月定期的にオンラインセミナーを実施しており、「根本的な部分は変更することなく、最新のトレンドを都度取り入れて内容をブラッシュアップしている」(林氏)という。無理のない範囲で改善を図り、効率的なコンテンツ制作を心掛けているのだ。
同社は今回のリード獲得サービスの展開を契機に、オンラインセミナーに積極的に取り組むようになった。サービス利用当初と現在の違いとして、林氏は「自社開催セミナーに参加者が集まらない時期もあったが、毎月定期的に開催することで徐々に集客できるようになり、案件化も増えてきました」と語る。
獲得したリードに対するネクストアクションは、まず林氏とCRM担当者がスクリーニングを実施する。「リード獲得だけでは次につながらないことは、マーケティング以外のメンバーも分かっています。リード獲得後、いかに自社と接点を持ってもらえるかが重要です」(林氏)
林氏が「今回のリード獲得施策は、これまでとは全く違うものだと思った」と感心したのが「閲読時アンケート」だ。閲読時アンケートでは、「担当者から説明を聞きたい」「無償試用版の申し込みがしたい」「詳しい製品資料が欲しい」「導入事例資料が欲しい」など、WPや動画の閲覧者が出稿企業に求めているアクションを選択できる。アンケート回答結果は出稿企業の担当者に即時通知されるため、林氏は「CRMにデータを取り込む前に個別にメールをお送りするようにしています」と語る。今回の施策では、実際全獲得リードのうち7.5%が閲読時アンケートに回答しており、高いCTA(Call To Action)を実現しているといえるだろう。また、今回の施策におけるリード獲得数の割合は、WPが全体の4割に対して動画が6割を占めている。「オンラインセミナーに注力し始めた2年前と比べて、現在はWPよりも動画での閲読時アンケートの回答数が増えていて、動画の採用メリットを感じつつあります」(林氏)
ビットフォレストでは、獲得したリードに対するテレマーケティングは実施していない。そのため、メールでのマーケティング施策には慎重を期している。
「リードを獲得しただけでは、コンテンツの閲覧者が求めている情報が分かりません。もし、閲覧者が必要としていない情報を送ってしまうと、その時点でオプトアウトされてしまうこともあります。閲読時アンケートの回答結果を踏まえてメールを送れるので、安心感があるのではと思います。実際、どのような情報を求めているかが分かることは、マーケティング施策を実施する上で非常に助かっています」(林氏)
アンケート未回答のリードに対しては、CRMに取り入れた後に新しいコンテンツを制作したり、オンラインセミナーを開催するタイミングでメールを送っているという。林氏は「アイティメディアのサービスで獲得したリードからのオンラインセミナーへの申し込み数は多い印象です」と語る。
また、長期的なリード施策を実施して気づいたこととして、「接点を持ってから1年後に新しいセミナーに申し込まれるなど、短期的な関係性で終わらないリードが多いと感じます。製品検討から導入までのプロセスが比較的長いセキュリティ商材を取り扱う当社に適していると思います」(林氏)とアイティメディアで獲得したリードの質を評価する。さらに、動画から取得したリードの方が、セミナー開催の通知メールなどの開封率が高いことにも満足していると明かす。
営業部門にエスカレーションしたリードに関しては、コンテンツを閲覧した上での商談になるため、営業担当者自身も商談がしやすいとのことだ。また、徐々にVAddyに関する問い合わせ件数も増えてきていることから、サービスの認知度向上にも手応えを感じているようだ。さらに、各コンテンツで獲得したリード情報や進捗状況はアイティメディアのシステムや営業担当者から随時レポーティングされる。林氏は経営層への報告においてもそのレポートを重宝しているとのことだ。
保証件数に到達したことで今回のキャンペーンは終了したが、ビットフォレストは今後もアイティメディアのリード獲得サービスを活用することを想定している。サービスを利用したことで、ターゲットとなるリードの獲得方法や自社コンテンツの有効性を確認できたとともに、獲得後のフォローアップ活動への手応えを感じたとのことだ。
林氏によると「比較的ニッチな脆弱性対策分野で単なる認知度向上施策を展開しても、大企業や有名企業に及ばないかもしれません。長期的な施策を継続して地道にリードを獲得していくことが重要だと考えています」という。
「他社との競合も予想されますが、8年間で約30万件以上の脆弱性診断の実績があり、セキュリティ専業企業が開発するサービスとして安心して使っていただけると自負しています」(林氏)
また、自身がマーケティング部門であることを踏まえて「中堅・中小企業のマーケティング部門は決して花形部署とはいえないかもしれません。また、営業部門や経営層などから常に評価を受ける立場にあることが多く、リードを獲得しただけでは評価されることは少ないこともあるでしょう」と語る。
その上で「アイティメディアのサービスは、件数や属性などのリード品質が保証されていて、自分たちが作りたいコンテンツの制作や各種施策の運営をプロである同社がしっかりとサポートしてくれます。施策を実施できる予算があれば、検討に値するサービスだと思います」との見解を示す。
同社はセキュリティ業界に認められた高い技術力を強みとして「Webサイトセキュリティのエキスパート」として業界をリードする存在であり続けるだろう。今後もコンテンツを活用した新規リード獲得によって活躍の場を広げていく方針だ。
*2010年度から2022年度の実績 https://www.scutum.jp/topics/waf_leader.html
従来の脆弱性診断ツールのように導入前トレーニングや複雑な設定作業を必要とせず、簡単なブラウザ操作だけで未経験者でも最短10分で初回の検査を開始できる手軽さが支持され、数人規模のスタートアップ企業から数万人規模の大企業まで幅広く利用されているクラウド型Webアプリケーション脆弱性診断ツールです。
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