システム運用・構築のDXを推進するNEC、
社内認知に向けたウェビナー企画を
@ITに任せた理由

NEC_吉田様
日本電気株式会社 テクノロジーサービス部門
サービス&プラットフォームSI統括部 吉田功一氏

「メディアと併走してウェビナーを実施したことで、NECだけでは得られない発想や起きない反応があったのは成果でした」

吉田功一氏:2006年NEC入社。10年以上、大規模通信キャリアのシステムアーキテクチャー設計、開発プロセス設計、運用プロセス設計に従事。システムエンジニアとして多忙な日々を過ごす中で、業務の大半が「アナログ・手動・非効率」であることを課題と捉え、2015年頃より「デジタル化・自動化・効率化」への取り組みを始動。2019年にExastroの最初のソフトウェアであるExastro IT Automation を公開し、現在に至る。 

記事公開日:2022年08月01日

自社製品の理解促進は社内メンバーが講師を務める勉強会で行う――そんな「常識」に疑問を持ったのが、NECだ。

システム構築・運用自動化ツール「Exastro」はNEC発ながらソースの公開されたOSS(オープンソースソフトウェア)という性格を持つことから、NEC社内よりも社外の方が高い認知を得ていた。Exastroの最初のソフトウェアであるExastro IT  Automationを生み出した NECの吉田功一氏は状況を憂い、アイティメディアに協力を依頼した。

そして2021年、NECはExastroの社内認知向上に向け、パネルディスカッションや実案件を体験した担当者による事例紹介などをウェビナー形式で 3回実施した。社内認知を上げるためメディアに協力を依頼する。そんな類を見ない取り組みの効果について、NECの吉田功一氏(テクノロジーサービス部門 サービス&プラットフォームSI統括部)と企画協力したITmedia統括編集長 内野宏信氏に聞いた。

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導入背景と課題 社内外の認知ギャップ
導入内容 市場調査/企画協力/社内ウェビナー実施
利用による効果 社内意識の向上による新領域開拓

●旧態依然なIT構築の現場、その意識とやり方を変革するウェビナーを企画

ーー2021年にNECが展開したExastroに関する社内勉強会ウェビナーの企画・実施にアイティメディアも協力させていただきました。どのような経緯でアイティメディアに協力を依頼することになったのでしょうか。

吉田氏:はじめにExastroというOSSが誕生したきっかけと私自身の課題感から説明したほうが、経緯が分かりやすいと思います。まずExastroですが、これはシステムの開発・運用をデジタル化・自動化・省力化するオープンソースのソフトウェアスイートで、私が開発しました。きっかけは入社してから10年ほどSE経験を積むなか、システムインテグレーションにこそシステム化や効率化が必要だと考えたからです。 

NECに入社したのは2006年で、最新のIT開発に携われると喜んでいたのですが、ここで最初の衝撃を受けました。プロジェクトに入ると大量の手書き風の設計図が流通するなど何もかもがアナログだったからです。最新のデジタルを生み出すはずの私たちSEの業務が非効率だったことにショックを受けました。

その後すぐにスマホが普及し始めました。私は通信キャリア系のSEだったので、爆発的な需要増の中、スマホ用の新ネットワークシステム構築に携わりましたが、アナログでの情報管理はすぐに限界に達しました。これではまずいということで、私がコンテンツマネジメントデータベース(CMDB)の原型を作り、プロジェクトに関わる2000人のツールとして提供したのです。これが当たり、その後も続く需要増でもバグを発生させることなく開発を乗り切ることができました。

その後、通信系だけでなく、金融系や製造系、流通などさまざまな業界で、やはりアナログが多く残っていることを知りました。これに第二の衝撃を受け 「CMDBを汎化し、新しい開発・構築・運用手法を提供することで、不毛なスペックや過剰な費用を発生させないようにする 」という方針が生まれました。 その手段として誕生したのがExastroです。

Exastro概念図


ーーそのExastroの社内ウェビナー企画ですが、どのような課題の課題解決を目指したのでしょうか?

吉田氏:
いま多くのSE は「お客様にどのような価値を提案・実現できるか」という問題に直面しています。20年前なら「IT技術者はシステムを提供する」で済んだかもしれませんが、急激な市場変化の渦中で、そんな単純な話ではなくなっています。システムを届けるだけでなく、そのシステムをお客様が気持ち良く運用していくノウハウであったり、提案であったり、新しいやり方の実践なども含めて、変わっていかねばならない岐路にある。私はそう考えています。

しかしSE"だけ"ではなかなかこれまでのやり方から脱却できません。そこでお客様から「こういう手段でシステムをデリバリーして欲しい」と要望を出していただけるよう、2020年にアイティメディアにも協力頂き、Exastroの社外認知向上に努めたのです。

その甲斐あって、お客様の方から「Exastroというツールで新しいやり方でやって欲しい」と声をかけられるようになりました。ただ、そのためか社外認知に対して社内での認知理解が及ばない状態となってしまい、「せっかくお客様に求められているのに、社内が十分に応えられない」という状況に陥ったのです。

●メディアならではの「市場調査」で課題を可視化し内容を構築

ーー社外と社内で認知のバランスが崩れていたので、Exastroに関するインターナルコミュニケーション強化が必要だったわけですね。

吉田氏:はい、それが2021年のことでした。単にExastroというツールだけでなく、システム構築・運用のデジタル化・自動化・省力化に関し、NECの技術者たちが専門知識をもって受け答えできる状態にしたいという課題がありました。

ーーウェビナー企画を担当した内野さんは、この課題を受けてどのような提案をしたのでしょうか?

内野氏:
吉田さんの話にあったSI企業やSEの役割の変化については私も感じていたところです。時代がDXとなり、システムをただ運用維持するだけでなく、そこからどのような価値を創出するのかが求められています。言われたものをただ構築するだけでなく、「こうすればもっとビジネスに有用なものができます」という提案をしなければならない、SI事業者もビジネスモデルを変革しなければならない時代になっています。

とはいえ、運用は未だに手作業中心で、属人化のために全体像が分かりにくくなっているのが大企業の実態です。 インフラエンジニアやSEもあまり進化していません。その実態を一回しっかり見据えて変えていかなければならないと思いました。こういったメディアとしての問題意識が、吉田さんが持つ問題意識に合致する印象を持ちました。

そこで企画として考えたのが「運用の実態を見定めることから始める」というアイディアでした。まず読者アンケートをとって、企業の運用実態を見据えた上で、何が問題で運用を変革できないのかそのポイントを洗い出した上で、NECがどういう支援ができるのか、企業はその支援を受けてどう変わるのか、この辺りをアンケートという現実を基にしてウェビナーのコンテンツとして組み立てていくというものです。

日本電気株式会社(NEC)様Exastroお取り組み概念図
内野からの提案は@IT読者を対象にしたアンケートを実施、
「企業の運用実態」を見すえた上でNEC社内へExastroの理解促進を図るというものだった

まずは特にインフラ運用でも核になっている「運用自動化」にフォーカスして、その実態と課題は何かという問いかけをしました。その結果、「運用がどのように回っているのか、つまりプロセス全体が見えていない」という事実が浮かび上がりました。加えて運用プロセスの棚卸ができていない、棚卸ができてもその後の標準化ができていないなどの課題も付随して見えてきたのです。

吉田氏:アイティメディアさんとはもともと2020年からExastroの社外啓蒙でお付き合いはあり、私達が本質的に目指していた目標をご理解いただいていたので安心でした。私たちのチームが取り組んでいる「日本の産業全体をどうしていくか」「世界的にどうしていくべきか」といった課題感や問題意識も汲んでいただきました。

内野氏:従来のNECには着実に物事を進めるウォーターフォール型の組織という印象がありましたが、吉田さんのチームは「ユーザー企業と対等の立場で伴走しながら価値提案をしていく」というアジャイル型ですね。そうしたマインドを持っているチームがNECという大規模SI企業にいるということを改めて発見し、メディアとしても興味深く感じました。

●市場変化を認識してSEの意識が大きく変容

ーー内野さんを中心にウェビナーを3回実施しましたが、その内容についてどうお感じになりましたか。

吉田氏:ウェビナーの事前アンケートですが、私たちが業界全体を捉えるきっかけになりました 。社内の多くのメンバーがそうなのですが、目前の技術や仕事が中心となり、なかなか業界全体を捉えきれません。そこを手助けする形でウェビナーを進めたことが、企画成功のポイントだったと思います。かなり好評でしたし、「勉強会の資料を提案資料として活用していい」と話したところ、早速その資料を持ってお客様に提案する社員もいました。

その結果、これまでなかなかアプローチできなかったお客様に対しても、お客様とNECとの間で新しい運用・構築のデジタル化・自動化・省力化という概念を共有できるようになったおかげで上々の滑り出しとなりました。やはりアイティメディアさんからの提案にあった、メディアとしての市場調査を行い、その結果を基に説得力のある内容にしていったことが大きかったと思います。

内野氏:おっしゃる通り、事実に基づいて企画を組み立てたことが説得力を持たせるうえで最も効果的でした。回を重ねるごとにテーマを少しずつ変えて、深堀していくような形で中身を突き詰めていけた点も非常に良かったと思っています。

●実施したウェビナーのタイトル
第1回:負荷もコストも減らない、スクリプトも役立たない。一体どうすれば?――“運用ダークサイド”からの救出法
第2回:ServiceNow×Exastro連携~IT運用管理の高度な自動化へ~
第3回:事例から見るシステム構築/運用自動化の現状~NECの視点で語ります!案件の寄り添った担当者だから言える課題の乗り越え方~
一般的にこうした広告系の案件は単発が基本ですが、単発だと「やってよかった」で終わってしまうことが多いのです。

今回のように、社内の認知度を確実に着実に高めていく、あるいは社外の顧客に対してロイヤリティを継続的に高めていくことを考えると、1テーマで継続的に実施し、関係性を深めるアプローチは非常に有効ではないかと思います。同じ商材だとしても、たとえば経営層向け、事業部門長向け、現場向けでは訴え方も異なるので、今回のような連続企画になると非常に効果的な訴求がしやすくなりますし、これはそのショーケースの1つとなり得るのではないかと考えています。

 

●社内勉強会ウェビナーにメディアが入る意義

ーー内野さんを中心にウェビナーを3回実施しましたが、その内容についてどうお感じになりましたか。

吉田氏:属人的な話になりますが、内野さんのプレゼン力が非常に高く、ハイレベルなファシリテートしていただいた点を評価しています。またメディアが入ることで、NECだけでは得られない発想や起きない反応があった点もポジティブな成果でした。もし同じテーマをNEC社内で企画しても、いまのような反応にはならなかったと思います。

内野氏:私も吉田さんとお話していて、新たな発見もありましたし、勉強になることもたくさんあったと感じています。それはやはり、市場感覚や、ユーザー企業の実態に対して高い問題意識をお持ちだったので、私たちも真剣にその課題解決につながるような企画を提案しました。そうした意味では、吉田さんの存在があったからこそ、アイディアが昇華できたと思います。

ーーウェビナーを3回実施し、受講した方々にどのような変化がありましたか?

吉田氏:アンケートを3回続けた結果、システム運用の自動化レベルのパーセンテージがじわじわ増加傾向にあるなど、確実に市場を捉えることができたので、参加者の意識も変わりました。それまでは「市場も変化しているだろう」程度だった認識が、定量的にその兆しを可視化できたので「お客様にこの変化について伝えなければ」という意識が芽生えたように思います。その変化がいまになって、実を結んでいると感じています。

ーー先ほど、これまでアプローチできなかった企業にもアプローチできるようになったという話がありましたが、そのあたりの波及効果についても詳しくお願いします。

吉田氏:NECはあらゆる業種・業界において、開発や構築や運用などの実績があります。Exastroとそれに伴うデジタル化・自動化・省力化の社内認知が上がることで、あらゆる業界に一気に広がっていくと考えています。

内野氏:ITmediaもDXを打ち出して早5年以上になるのですが、やはりアンケートを見てもDXはほとんど進んでいないように見受けられます。まったく進んでいないわけではありませんがなかなか全社波及せず、成果につながっていません。

その点、今回のExastroは、自動化の取り組みの裾野を広げるきっかけになったと思います。それで全社展開をしたり関係企業にもその活動が波及すれば、DXを進展させる一種の起爆剤になるような気がします。

●今後もIT業界/エンジニアの価値向上に貢献したい

ーー最後に、NECとして、そしてExastroの展望などについてお聞かせください。

吉田氏:私が何か迷いそうになった時には「三方よし」という言葉をチェックリストとして使っているのですが、まさにこの「三方よし」を推進していきたいです。

日本電気株式会社(NEC)様ビル画像

一方は、最先端技術を届けているSEです。私自身も含まれるわけですが、最先端技術を届けるSEはかっこいい、素晴らしい仕事だと胸を張り、気持ち良く仕事をすること。

もう一方は、システムを必要とする企業の方やお客様、またはITを使ったサービスを提供しようとする方々です。SEの仕事で、その方々のビジネス価値向上に貢献したいですし、その方々も価値に満足して、ITを真の意味で活用できるようになる。内野さんの言葉を借りればDXが推進できている、そんな状態がもう一方の良しです。

最後の一方は、世間です。世間がどう見るかという点もポイントです。最先端技術を提供するSEがいて、それでDXでビジネス価値を高めている人たちがいると、世間は「システムやITに携わることはかっこいい、憧れだ」という印象を持つと思うんです。そういう見方が変われば、エンジニアの社会における価値も上がり、それが経済的な成果につながるかもしれませんし、社会的なステイタス向上につながるかもしれません。 Exastroをきっかけにそんな社会になればいいと思います。

内野氏:1990年代までは、ITに対して「ちょっと仕事を楽にしたりコスト削減に役立つもの」くらいのイメージだったかもしれませんが、今日ではIT=ビジネスモデルのような等式が成り立っています。これに伴い、エンジニアの役割も、開発者ではなく「収益やビジネスモデルを考える人」に変わってきていると思います。

そのためご存じのように、米国のエンジニアは大リーグ選手並みの待遇を受けている人も多いですが、日本ではまだそこまで至っていません。ただ一部では、エンジニアの価値を正しく評価して、その人たちが目指すこと、創造性を伸ばして活躍してもらうという機運も上がっているので、Exastroによる新しい手法を広め、エンジニアの価値向上をより実現できたら、日本全体も大きく変化すると思います。

※掲載されている情報は、2022年8月時点のものです。
■日本電気株式会社について
日本電気株式会社様ロゴ

事業内容:

社会公共事業、社会基盤事業、エンタープライズ事業、ネットワークサービス事業、グローバル事業
■Exastroについて
Exastro

Exastroはシステムライフサイクル(設計・開発・設定・運用)をデジタル化・自動化・省力化することを目的としたオープンソースのソフトウェアスイートです。
手作業で行われることが多いSE作業を効率化し、お客様のDXを支えます。

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